医療創生大学

大学案内

学長告辞(平成30年度 学位記授与式)
 
それぞれの学部、大学院において無事教育課程を修了して学士あるいは修士の称号を得て卒業を迎えた131名の皆様に心からお慶び申し上げます。また保護者の皆様におかれては、御子弟の本日の晴れ姿をご覧になって感慨もひとしおのこととお祝い申し上げます。

さらに、ここに御列席いただいた来賓、関係者の皆様にはいわき明星大学を代表して厚く御礼申し上げます。
 
大学ではいきおい学力、特に知識が評価の対象となりますが、卒業される皆様が本学で学んだことは知識だけではなかったはずです。特定の科目として履修はしていないとしても、態度や技能、問題解決力などよく言われる「生きる力」をいずれかの局面あるいは何らかの機会を得て身につけたものと思います。
 
ところで新聞のコラム記事から、「今」と題した文章の一部をまず紹介したいと思います。その内容は次のとおりです。

『ぼくはこういうことを学生たちに話す。つまり、今は人々が進歩にア・プリオリ(先験的、先天的)に価値を認めていた幸せな時代とは違って、何が何やらわけのわからない時代なのだということを。すると学生から異論がでる―-―「ではぼくらは何を確かなものと信じて生きていけばよいのですか?」
それを求めたからこそヒトラーがあらわれたのではなかったか?「確かなもの」などという絶対的概念なしに生きていくタフな神経が、今は必要なのではないかとぼくは思っている』

この記事は決して最近のものではありません。有名な動物行動学者にして達意簡明なエッセイストであった故日髙敏隆氏が1971年に書いたもので、丁度半世紀前の大学教授と大学生のやり取りです。今も昔も、さらに昔も将来も、大学生の求める問題とその答えは本質的には変わらないということを申し上げたいのです。

先程申し上げた「生きる力」こそ、日髙氏の謂う「確かなもの」などという絶対的概念なしに生きていくタフな神経ではないでしょうか。
 
タフな神経とは、別の言葉を選べば競争を恐れないこととも言えるかもしれません。必ずしも競争は利己的、一方、協力は利他的であるとは言えないと説く人もいます。経済学者の大竹文雄氏です。大竹氏は著作の中で、プロバスケットボール界では神様であったマイケル・ジョーダンもメジャーリーガーへの転身は叶わなかった例をあげて、競争で強みを見つけることを述べています。

つまりバスケットボールだけではなく野球やアメフトも子供のころから得意で、ジョーダンほどの傑出したアスリートであっても、プロレベルの熾烈な競争の下では、自分の最も得意なものに特化し集中しない限りトップをとることはできない。競争は勝者と敗者を生み、厳しく辛い面もあるが、競争が繰り返された結果、自分が真に活躍できる場所を見つけられる確率が高まるのであればそれは喜びとなるはずだ。誰にでも得手不得手がある。不得意な分野で消耗戦を続けるのは、本人にとっても社会全体にとっても不利益でしかないというものです。

大竹氏は続けます。私たちは、下手に自分探しをするよりは、競争にさらされるほうが、自分の長所を知って創意工夫ができるようになるはずで、これが競争当事者のメリットではないかと。当事者がどのような優れた特性をもっているかは、競争がなければわからないのです。競争は自分の強みを見つけ、社会を活性化する機会でもあると。

確かなものなどない。あったとしても永続からほど遠いもの、あるいは単なる錯誤であるとするならば、不確実性が増加、拡大する現代社会の中で、競争に身をさらして、自分の強みを見つけていただくことを学窓から離れる卒業生諸君へぜひお願いしたいと思います。
 
今回の卒業生諸君は、いわき明星大学に入学して、いわき明星大学を卒業する最後の学生です。いわき明星大学は本年4月1日より医療創生大学となりますが、開学以来培われてきた良い伝統は継承されます。いや、されなければなりません。どうぞいわき明星大学で学んだことを誇りとして、輝かしい将来に旅立っていただきたい。ご卒業おめでとうございます。

平成31年3月21日
いわき明星大学
学長 山崎洋次