健康医療科学部は、作業療法学科と理学療法学科の2つの学科で構成されています。両学科とも国際水準の知識・技能に触れながら、健康・医療課題を理解し、解決に導くための「科学的思考」を身につけ、臨床と科学を実践できるクリニシャン・サイエンティスト(Clinician-Scientist)の養成を目指します。
健康医療科学部長からのメッセージ
特別な4年間の学びと学生生活を通して、
誠実で信頼される理学療法士・作業療法士を目指してください。
健康医療科学部長 古川 勉寛(ふるかわ・かつひろ)教授
日本の高齢化や医療の高度化にともない、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の活躍が期待される領域は拡大してきています。従来行われてきたリハビリテーションに加え、さまざまなテクノロジーを駆使した新しいリハビリテーションへの取り組みも重視される様になりました。これを受けて、諸外国では教育を高度化し、より実践的な臨床科学者(クリニシャン・サイエンティスト)を養成する流れがあります。
本学部は、そのような流れに対して戦略的に挑戦するために、2019年4月、福島県内の大学としては初めて、PT・OTの資格取得を目指す学部として誕生しました。ここで実践される高度なカリキュラムは、国家試験合格に向けた教育、就職先で活躍するための教育、新しいリハビリテーションを取り入れる力を兼ね備えたクリニシャン・サイエンティストになるための教育が組み込まれています。本学の高度なカリキュラムをさらに進化させ、令和5年度から新カリキュラムの教育を開始しております。新カリキュラムは、国際的なガイドラインやこれまでの教育実績を振り返り、本学部教員が一致団結し「学生が卓越したPT・OTになるために、どのような教育が必要か」との視点で、作成しました。この新カリキュラムがさまざまな意味で福島県の活性化に寄与することを願っています。
また、本学部では、国際的に活躍している教員、大学院(修士課程や博士課程)における教育・指導実績がある教員、臨床・教育・研究分野において幅広い経験を積んだ教員が学生を指導します。特色のあるカリキュラムにおける指導体制に加えて、カリキュラム外で本学部独自の国際交流プログラムを提供する体制を構築しました。
国際交流プログラムは、初代健康医療科学部長Goh Ah Cheng教授(現 学長代行)、学部長補佐 阿部裕一教授、理学療法学科長 齋門良紀教授の尽力により、海外の大学と国際交流協定を締結し、マレーシアやシンガポールから短期留学生の受け入れ、本学部生が言語力以上に大切な異文化理解力を磨く機会を提供しています。令和6年度は、タイやマレーシア等から年4回(5月、6月、9月、12月)短期留学生を受け入れるために準備を進めています。また、本学生の希望者がシンガポールへ短期留学する計画を独立行政法人 日本学生支援機構 海外留学支援制度 学生交流創成タイプに申請し、2024年度分について採択されました。2024年度の採択プログラム一覧によると、本学は関東地方・東北地方のPT・OTの資格取得を目指す学部の中でも稀な採択です。
私たちは、皆さんが本学部で学んだ専門知識と技術、探究心を土台に継続的に学び、社会人としてのスキルを磨き、誠実で信頼されるPT ・OTになることを期待しています。そのことが、生涯のキャリア獲得につながると考えています。私たち教員一同、その第一歩である4年間の学生生活を喜んで支援します。
健康医療科学部の特色
特色1:海外の大学との国際交流で、国境を越えて理学療法学や作業療法学について学び、国際水準の知識・技能に触れる
本学部は、学生交流や国際共同研究を推進することを目的に、マレーシアのUniversiti Tunku Abdul Rahman(UTAR)、Universiti Teknologi MARA(UiTM)、Mahsa University(MAU)、 シンガポールのSingapore I nstitute of Technology(SIT)、インドネシアのUniversitas Aisyiyah(UNISA)と国際交流協定を締結しています。
2019年にはMAUの学生が短期留学生として本学で約1カ月間学びました。2020〜2021年は新型コロナウィルス感染症感染拡大の影響で 海外客員教員によるオンライン授業のみとなりましたが、2022年は健康医療科学部長らがUNISAを訪問して特別講演を行いました。
2023年は健康医療科学部長、理学療法学科主任がUTARを訪問して本理学療法学科の運動器理学療法学の授業内容「超音波エコーを使用した肩関節の評価」についてのワークショップで講師を務めました。同年、SITとUTARの学生が短期留学生として本学部で学びました(健康医療科学部 短期留学プログラム)。
その際は、本学部生の希望者で国際交流ボランティアのグループを構成し、短期留学生が楽しく、安心していわきキャンパスで学ぶことができるよう、親交を深める歓迎セレモニーを開催しました。授業では、グループワークおよび講義・演習など通して一緒に勉強しました。
独自に作成した短期留学プログラムの中で、学生は語学の壁を乗り越えて積極的に交流する姿を見せてくれました。毎年、定期的に健康医療科学部 短期留学プログラムを実施する予定です。
また、本学部ではGoh Ah Cheng教授、阿部 裕一教授、古川 勉寛教授がUNISAの客員教授を兼務する他、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、イギリスの4カ国で活躍する健康医療科学系教員を客員教授および客員准教授、客員講師に迎え、国際水準の知識・技能に触れる機会を設けています。
そのため、本健康医療科学部 理学療法学科では、標準的な大学理学療法学教育に加えて、“国際的な理学療法学教育”を学ぶ機会を設けています。教員が国際的に勉強することを推奨していますので、各授業科目の中に国際的な要素を組み込むよう工夫をしています。
学生は、国際水準の知識・技能を学び、短期留学生との交流から学ぶことで、誠実で特徴ある医療人へと成長します。本学部では、人と人との交流を大切にした教育を提供し、国際レベルで通用する誠実な医療人の養成をめざしています。
特色2:健康から医療をシームレス(連続的)に考えることができる人材を。
これからの時代、健康の維持・増進から病気の予防・治療までを連続的に捉えて、対象者の多様性に対応しながら「QOL(Quality of Life:生活の質)」を高めることに貢献できる理学療法士と作業療法士が求められます。
本学部では、健康・医療課題を理解し、解決に導くための「科学的思考」を身につけ、臨床と科学を実践できるクリニシャン・サイエンティスト(Clinician-Scientist)の養成を目指すとともに、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)にふさわしいヒューマニズムや倫理観の修得をめざし、学内演習教育の充実を図りました。
卒業後も本学部教員は、卒業生の科学的思考が醸成することを支援するために、学会発表のサポートや臨床症例の相談を受けるなど、ここで学んだ絆を大切にして継続支援をしています。さらに、卒業生が十分な臨床経験を積んだ後、働きながら大学院で学ぶことを支援する体制も整えています。
OT:Occupational Therapist
PT:Physical Therapist
特色3:好奇心を高めて課題を発見し、やり抜く力で課題解決できる人材を。
本学で学ぶ4年間は、あっという間に過ぎてしまうと卒業生は言います。
本学部の教員は、理学療法士免許や作業療法士免許を取得してから5年、10年、20年、30年と社会人経験を重ねてきました。そこで改めて気づくことは、「学びに終わりが無い」ということです。
同僚や先輩・後輩、患者様等から学ぶ機会が沢山あります。その機会に気づくことができるかどうかは、皆さんの好奇心次第かもしれません。
無理に好奇心を高めようとしても、好奇心を高めることができません。好奇心を高めるためには、「理解できること」と「実行できるようになること」の2つがとても大切です。
そのため、本学部では、理解できるようになることを支援するための講義授業科目と実行できるようになることを支援するための実技演習授業科目を組み合わせて、カリキュラムを設計しています。
また、仕事における課題を解決するためには、考える力とコミュニケーションがとても大事だと考えています。
考える力を向上させることは、簡単なことではありません。本学部のカリキュラムでは、様々な可能性を考えて行う実技演習授業科目がありますので、「考える学び」の楽しさを経験する中で、少しずつ考える力の向上を目指していきます。
そして、患者様とコミュニケーションをとることを筆頭に理学療法士や作業療法士は、積極的にコミュニケーションを取ることを大切にしています。クラスメイトや友人、知人、家族等とのコミュニケーションが、皆さんの生活の基本であるように、正確な医学用語を使用した専門職種間のコミュニケーションは、チーム医療の基本です。
本学では、臨床経験・国際経験豊かな教員陣の下、特徴的なカリキュラムによって学生の将来のキャリアのために短期目標である国家試験合格に向けた教育、中期目標である専門家としての技術習得に向けた教育、長期目標である生涯学習が継続できる様になるための教育を提供することで、次世代の医療技術者を養成します。
特色4:より実践的な臨床科学者(クリニシャン・サイエンティスト)※2を。
学部設立の背景には、福島県に医療・保健・介護・福祉人材が不足し、量的充足と質の向上が求められていたことがあります。
本学部は、福島県初の4年制大学におけるPT・OT養成課程です。医療機関と密接に連携し、「健康寿命の延伸」及び「地域包括ケアシステムの構築」に貢献する実践的な臨床科学者(クリニシャン・サイエンティスト,Clinician-Scientist)の養成に取り組みます。
クリニシャン・サイエンティストとは、病院や施設で作業療法士や理学療法士として活躍しながら、最新の作業療法や理学療法について学び続けられる人材を表しています。
多くの臨床現場において、新人作業療法士・理学療法士が職場内での症例報告発表や各種学会での発表を実施していますので、クリニシャン・サイエンティストを目指すことは、臨床で活躍するためにも良いと考えます。
なお、本学部は、学部誕生した令和元年度(2019年度)から病院や施設で働く理学療法士や作業療法士の方を本学生命理工学研究科(旧 理工学研究科)で受け入れ、クリニシャン・サイエンティストを目指した教育を展開しています。
これまで、大阪府、山梨県、神奈川県、千葉県、茨城県、福島県、宮城県から大学院生を受け入れ、Goh Ah Cheng学部長、古川勉寛 副学部長、阿部裕一理学療法学科主任、齋門良紀 教務・総務リーダー、小林大介 臨床実習リーダー、岡野怜己 国家試験対策リーダー、佐藤惇史 学年主任、北山淳 作業療法学科主任(令和5年度退職:現 京都光華女子大学)、三好圭准教授(令和5年度退職現 常葉大学)、荻原久佳 准教授(令和3年度退職:現 名古屋女子大学)が兼務して教育実践をして参りました。
令和6年度から、理学療法士の博士号取得を支援するため、Goh Ah Cheng教授、阿部裕一教授、齋門良紀教授、古川勉寛教授、小林大介准教授の5名体制になります。博士課程でも教育を行う教員が学部生の教育を担いますので、その専門性を各回の授業に取り入れて授業を行います。
※2:医療・介護現場の変化に応えるため、近年はPT・OT養成の教育水準が高度化しています。海外には修士(大学院卒)以上にPT・OT資格が与えられる国も多く、日本でもPT・OTを養成する大学が増加しています。
取得できる資格
- 作業療法学科:作業療法士国家試験受験資格
- 理学療法学科:理学療法士国家試験受験資格
健康医療科学部の沿革