医療創生大学

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暗示の力について

心理学部 臨床心理学科 窪田 文子 教授 WEB
 

 心理学部の窪田文子(くぼたのりこ)と申します。

 心理学の分野では、臨床心理学が専門で、臨床心理士と公認心理師の資格を持ち、本学で臨床心理学を教える傍ら、学内の心理相談センターで市民の皆様の相談に対応したり、市内の学校でスクールカウンセラーをしたり、会社の従業員支援プログラム(EAP)で労働者のメンタルヘルスの支援など臨床心理実践を行っています。

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​ 大学3年生の時にとった授業で「催眠」を学び、その後、催眠を用いた心理療法を勉強して、いまだに催眠との付き合いが続いています。

 「催眠現象」は「暗示」によって引き起こされるのですが、「暗示」というのは、一種のコミュニケーションで、言葉や身振りなどで、あるメッセージを相手に伝えることで、相手の考えや感覚、行動に影響を与える現象を指します。実は、「暗示」が用いられるのは、催眠場面だけではありません。よく見ると、私たちの日常生活の中にも暗示が存在しているのです。

 「新発売」「新登場」というCMを見て、その商品を買ってしまったことはありませんか。中には、「新発売」と聞くと、その商品の前を素通りできない、と影響を受けまくりの人もいるかもしれません。「買ってください」と言ってはいないのに、人に購買行動を起こさせるという点で、「新発売」という言葉は、暗示として働いているということができます。また、学校の先生に「あなたは歌が上手ですね」と言われて、音楽を勉強して、将来は音楽に関係した仕事につくことを目指す生徒などは、先生のコメントが暗示として働いて、自分の将来のイメージを描いたことになります。

 このように暗示には、短時間で作用するもの、長期間に及ぶものなど様々ですが、私たちは気づかないうちにいろいろなメッセージの影響を受けていることがあります。普段の生活の中に存在する「暗示」を探してみるのも、面白いかもしれません。

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2022.11.30