本学からは、専門職の実践支援、役割の明確化、そして教育の在り方という3つの視点から、精神科看護の質向上に資する知見を報告しました。
■ 統合失調症者への不眠に対する認知行動療法の有効性と精神科看護師における支援のあり方に関する文献検討
発表者:〇野崎裕之(医療創生大学看護学部、福島大学大学院共生システム理工学研究科)、伊勢野明美(医療創生大学看護学部)、都田直樹(医療創生大学看護学部)、大森徹(合同会社Big Forestナースステーションいぐばい)、鈴木和(北海道医療大学看護福祉学部)、長谷川幹子(医療創生大学看護学部)、高原円(福島大学共生システム理工学類)
本研究は、統合失調症を有する人の不眠に対する認知行動療法(CBT-I)の効果と課題を文献検討によって整理したものです。分析の結果、CBT-Iは入眠潜時の短縮(布団に入ってから眠りにつくまでの時間を短くする)や睡眠効率の改善に加え、精神症状や生活機能の向上にも寄与することが確認されました。一方で、個人差や認知機能への影響、継続支援の課題も明らかとなりました。精神科看護師には、患者の特性に応じた柔軟な支援や、ICTを活用した新たな介入方法の実践が求められていました。
■ 精神科認定看護師の役割明確化による業務効率への影響についての文献検討
発表者:〇伊勢野明美、野崎裕之、都田直樹、長谷川幹子(医療創生大学看護学部)
精神科認定看護師(CEPN)の役割明確化が業務効率やチーム医療に与える影響を文献検討により明らかにしました。CEPNの専門性は、技術的スキルのみならず、倫理的判断力、多職種連携、患者との関係構築など広範な実践力に支えられていることが示されました。資格継続や専門性発揮には、職場からの心理的支援や教育体制の整備が重要であることが確認され、精神科看護の質向上に向けた基盤づくりの必要性が示唆されました。
■ 精神看護実習における看護学生の学びに関する文献検討-地域に焦点をあてて-
発表者:〇都田直樹、野崎裕之、伊勢野明美(医療創生大学看護学部)
本研究は、精神看護学実習における学生の学びについて、地域をフィールドとした実習に焦点を当てて検討したものです。外来、訪問看護、デイケア、就労支援事業所など、多様な実習場面を通して、学生が地域で生活する人々を支える包括的な支援の重要性を理解していることが明らかになりました。今後は、地域実習の実施状況や教育課程における位置づけを明確化し、精神看護学教育のさらなる充実を図ることが課題となっていました。
3題の発表はいずれも、精神科看護における実践、制度、教育の三位一体的な発展をめざすものであり、本学が掲げる「地域に根ざした看護教育および研究の理念」を体現する成果です。
看護の現場で求められる力は、専門的知識だけでなく、こころに寄り添う姿勢と多職種との協働です。医療創生大学総合医療学部看護学科では、このような“こころに寄り添う看護”を実践的に学ぶための環境を整えています。
今後も本学は、地域社会と連携しながら、未来の看護を担う学生一人ひとりの成長を支援し、「こころに寄り添う専門職」の育成を通して社会に貢献してまいります。