「作業療法士」という職業の将来性について、わかりやすく解説します。
結論からいうと、作業療法士は非常に将来性の豊かな職業といえそうです。「求人がない」「働き先がない」…なんてことはなく、資格を持っていれば今後も引く手あまたの存在となるでしょう。
では、どういった観点で「将来性がある」といえるのか。そして、将来性のある職業といえる背景には何があるのか。医療系分野の進路を検討している高校生が理解できるように、わかりやすく説明していきたいと思います。
作業療法士の現状の需要は?

まず、“将来”の話の前に、“現状”から見ていきましょう。
2024年8月1日現在、作業療法士の有資格者は、11万8,471人(※1)にのぼります。毎年5,000人前後ずつ増加している状況です(※2)。
※出典2:セラピストプラス『【速報】2024年「第59回作業療法士国家試験」合格発表と合格率』
同じリハビリ専門職の理学療法士の場合、有資格者数は約20万人。今後ますます高齢化が進むなか、作業療法士と理学療法士の人数バランスを合わせたいという国の考えがあるようで、「まだまだ足りていない」といえるでしょう。
そもそも作業療法士は、活躍のステージが多岐にわたります。以下の図解をご覧ください。
勤務先
総合病院、大学病院、クリニック、整形外科、リハビリテーションセンター、障害福祉サービス事業者、身体障がい者福祉センター など
対象患者
病気やケガ、事故の後遺症などで身体に障がいが残った方
勤務先
リハビリテーションセンター、老人保健施設、在宅介護支援センター、特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、訪問看護ステーション、訪問リハビリテーション など
対象患者
加齢や認知症で認知機能や身体機能が低下したお年寄り(65歳以上)
勤務先
小児病院、発達障がい者支援センター、児童発達支援、放課後等デイサービス、母子通園施設、児童福祉施設、特別支援学校、幼稚園、保育所 など
対象患者
自閉症、知的障がい、学習障がいなどの子ども
図解のとおり、作業療法士の領域は4つに大別され、「どの領域で働くか」によって就職先が決まります。なかでも特に、「老年期障がい領域」で従事する作業療法士が不足しているといわれており、介護老人保健施設などでは今後ますます求人が活発化する可能性が考えられます。
作業療法士の「就職先・活躍場所」について、より詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
作業療法士はなくならない仕事!?

AI(人工知能)をご存じでしょうか?高校生のみなさんも、一度は耳にしたことがあるはずです。AIとは、わかりやすくいうと「人間に近い知能を持ったコンピュータやロボット」のようなもので、自ら学習する特徴を持ちます。
このAI技術やロボットの進化により、「10~20年後には49%の職業が代替可能になる」という研究結果が2015年に発表されました(※)。つまり、「将来なくなる仕事がある」という衝撃の事実が伝えられたのです。
果たして、作業療法士という職業は将来的にどうなってしまうのでしょうか。
以下の図表をご覧ください。

こちらの表は、自動化の可能性が最も低い職業(10選)を表しています。作業療法士は…というと、自動化が可能になる確率は、わずか0.1%と示されています。この研究結果だけを見ると、「なくならない仕事」ということがいえそうです。
これが、作業療法士が「将来性のある職業」といわれている具体的事実のひとつです。
アメリカでは作業療法士が “ 憧れの職業 ” って本当?

そんな「なくならない仕事」のひとつに数えられている作業療法士。実は、欧米では社会的地位の高い職業として認知されています。
事実、アメリカで発表された「2019年最優秀職業ランキング(※)」では、全米で13位にランクイン。医療の先進国であるアメリカやヨーロッパでは、作業療法士という職業に就いていること自体が、ひとつのステータスなのです。
アメリカでは作業療法士として活躍するには修士課程以上が必要など、作業療法士に関する制度が日本の現状とは大きく違いますが、いずれ日本においても、“憧れの職業”になる可能性を秘めた職業といえるかもしれません。
作業療法士の将来が明るい理由①

ではなぜ、作業療法士の将来は明るいといえるのか。その背景には、超高齢社会があります。高齢者(65歳以上)が全人口の約3割を占める超高齢社会。今後もしばらくは、65歳以上の人口増加が続くと予想されています。
高齢になると身体機能や認知機能が衰え、日常生活に支障が出てくるようになります。病院に通ったり、介護施設に入所したりするのは、そのためです。高齢者が増えると、病院や施設でリハビリを必要とする患者さんの数も増加します。つまりリハビリの専門職である作業療法士の需要は高まる一方だといえます。
また、従来では高齢になると病院や施設に入所することが当たり前でしたが、高齢化が進む近年ではセルフメディケーションを推進する動きが活発になってきています。セルフメディケーションとは、自分自身で健康の維持・増進や病気の予防・治療にあたることです。一人ひとりの高齢者ができるだけ自立した生活を送れるよう、その支援を重視する社会になりつつあるのです。
そこで期待されているのが、作業療法士の存在です。これまで作業療法士は病院内や施設内でのリハビリ業務がメインでしたが、今後は自ら地域に出ていき、病気や認知症を予防する働きかけを行うなど「新しい活躍ステージ」が需要として出てくる可能性が充分に考えられます。
作業療法士の将来が明るい理由②

作業療法士の需要が高まっている理由は、超高齢社会だけではありません。ストレス社会を起因としてメンタル面に不安を抱える人々が増加傾向にあることも、背景のひとつです。
たとえば、これまで性格や個性とみなされていた精神疾患や発達障がいが、医学の発展などにより、病気や障がいと認定されることもめずらしいことではなくなりました。そうした心の病や障がいが本人の日常生活に支障をきたす場合、作業療法士に声がかかるケースも増えつつあります。
前述したように、AIやロボットの技術進化により将来的になくなる仕事があるといわれてはいますが、“人の手”によって行われるメンタルケアや人に寄り添う支援は、AIやロボットにはできません。身体的なリハビリだけでなく、精神的なケアまで行える作業療法士ならではの存在価値はそこにあります。
作業療法学科について詳しく知りたい方はこちら
いかがだったでしょう。作業療法士の将来性や需要について、なんとなく理解いただけたのではないでしょうか。
作業療法士という職業に少しでも興味を持たれた方は、まず「作業療法学科」を有する大学・短大・専門学校などの資料請求をおすすめします。どの養成施設も各ホームページから無料で資料を請求できますので、気軽にトライしてみてください。
作業療法学科への志望理由として、本記事で解説した“将来性”をあげる高校生も少なくありません。ぜひ本記事の内容をふまえて、高校の先生方や親御さんともお話をしてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、この記事を書いた医療創生大学にも作業療法学科があります。資料請求は、以下よりお気軽にどうぞ。
また、作業療法士についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。本記事の「将来性」のほか、「仕事」「活躍場所・勤務先」「理学療法士との違い」「給与・年収」「なり方」「国家試験」をわかりやすくまとめています。