医療創生大学いわきキャンパス

学部・大学院

作業療法士と理学療法士の違いとは?仕事内容や活躍場所を徹底比較!

リハビリの専門職というと、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士などが挙げられますが、ここでは一番違いのわかりにくい「作業療法士」と「理学療法士」について比較していきます。

具体的に、以下6つの観点で両者を比較してみました。

この記事を読むことで、作業療法士と理学療法士の違いが明確になるはずです。医療系分野の進路を検討している高校生にとって、進路選択の参考になるよう丁寧に話を進めていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

作業療法士と理学療法士の違い1【仕事内容】

まず、仕事内容の違いを見ていきましょう。以下は、それぞれの職種について「誰に対してどんなリハビリをするのか」をカンタンに解説したものです。

作業療法士

【からだ】や【こころ】に障がいのある方に対して、応用的動作能力や社会的適応能力の回復をサポートする。

たとえば、「服を着替える」「ハシをもつ」「風呂に入る」「家事を行う」など、日常生活における各種作業のリハビリを行う。

point「からだ」と「こころ」の双方にアプローチできる唯一のリハビリ専門職!

作業療法士の仕事内容について詳しく知りたい方は、以下もあわせてご覧ください。

理学療法士

【からだ】に障がいのある方に対して、基本的動作能力の回復・維持をサポートする。

たとえば、「起き上がる」「座る」「歩く」「手を挙げる」などの基本的動作について、トレーニングや運動療法、物理療法などのリハビリを行う。

point 最近ではスポーツ選手のケガの回復・予防の分野でも注目!

作業療法士と理学療法士の一番の違いですが、身体機能のリハビリを専門に行う理学療法士に対して、作業療法士は「からだ」だけでなく「こころ」のリハビリも担当。リハビリの対象範囲がとても広い作業療法士は、活躍フィールドも広域にわたります。

一方、筋肉など「からだ」の構造と機能のスペシャリストである理学療法士は、患者さんの機能回復を目的としたリハビリはもちろんのこと、高齢者やスポーツ選手のケガ予防や身体機能維持といった場面でも活躍しています。

作業療法士と理学療法士の違い2【活躍場所】

作業療法士、理学療法士ともに、その大半が医療機関への勤務となります。しかしながら、時代の流れとともに活躍ステージは多様化していることも事実です。

それぞれの活躍場所・勤務先を整理しましたので、以下をご覧ください。

 作業療法士の活躍場所は?

作業療法士はリハビリを行う対象が幅広く、活躍フィールドが4つの領域に分かれます。

現状では、作業療法士の半数以上が【身体障がい領域】で勤務しています。次いで【老年期障がい領域】【精神障がい領域】が多く、全体の数パーセントが【発達障がい領域】で活躍しています。

詳しい勤務先は、以下のとおりです。

身体障がい領域

勤務先
総合病院、大学病院、クリニック、整形外科、リハビリテーションセンター、障がい福祉サービス事業者、身体障がい者福祉センター など

対象患者
病気やケガ、事故の後遺症などで身体に障がいが残った方

精神障がい領域

勤務先
精神科病院、メンタルクリニック、精神科デイケア、精神保健福祉センター、精神障がい者支援センター など

対象患者
こころの病気(統合失調症、うつ病など)や認知症の方

老年期障がい領域

勤務先
リハビリテーションセンター、老人保健施設、在宅介護支援センター、特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、訪問看護ステーション、訪問リハビリテーション など

対象患者
加齢や認知症で認知機能や身体機能が低下したお年寄り(65歳以上)

発達障がい領域

勤務先
小児病院、発達障がい者支援センター、児童発達支援、放課後等デイサービス、母子通園施設、児童福祉施設、特別支援学校、幼稚園、保育所 など

対象患者
自閉症、知的障がい、学習障がいなどの子ども

作業療法士の活躍場所について詳しく知りたい方は、以下もあわせてご覧ください。

 理学療法士の活躍場所は?

身体機能の回復を目的としたリハビリの実施や、身体機能の維持、ケガの予防を支える理学療法士。彼らの勤務先は、大きく5つに分けることができます。

医 療 機 関

勤務先
総合病院、大学病院、クリニック、リハビリテーションセンターなど

理学療法士の約60%が医療機関に勤務。整形外科疾患・心疾患・中枢神経疾患などの領域で活躍しているケースが一般的です。

高齢者福祉施設

勤務先
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、デイケアサービスセンター、訪問リハビリテーションなど

高齢者のリハビリに携わることはもちろん、身体機能の維持やケガの予防もサポートします。

児童福祉・障がい者福祉施設

勤務先
身体障がい者福祉施設、児童福祉施設、特別支援学校など

身体に障がいのある方を対象に、身体機能や動作能力のリハビリを行います。

行 政 機 関

勤務先
保健所、保健センター、地域包括支援センターなど

高齢者をはじめとした地域住民を対象にケガ予防の講演や運動指導などを行い、人々の自立的な暮らしをサポートします。

スポーツ関連

勤務先
プロのスポーツチームやフィットネス施設など

近年、スポーツトレーナーとして活躍する理学療法士が増加。ケガのリハビリや予防のほか、運動能力を高めるトレーニングを担当することもあります。

作業療法士と理学療法士の違い3【給与】

つづいて、給与額の違いを見ていきましょう。以下の図表をご覧ください。

職種 平均年収(概算) 平均月収
看護職員(看護師) 443万円 36万9210円
介護支援専門員(ケアマネージャー)
424万円 35万3560円
作業療法士・理学療法士・言語聴覚士 420万円 35万0080円
生活相談員・支援相談員 406万円 33万8370円
介護職員 379万円 31万6610円
管理栄養士・栄養士 373万円 31万1190円
事務職員 362万円 30万1940円
調理員 311万円 25万9270円
※出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」

平均給与で見ていくと、作業療法士と理学療法士で大差はないと考えてよさそうです。

作業療法士の給与について詳しく知りたい方は、以下もあわせてご覧ください。

作業療法士と理学療法士の違い4【将来性】

結論として、作業療法士と理学療法士ともに将来性の豊かな職業であることは間違いない事実といえるでしょう。

その背景には、今後さらに加速する超高齢社会などがあげられますが、両者には微妙な違いもありますので、それぞれ解説していきたいと思います。

 作業療法士の将来性は?

まずは、以下の図表をご覧ください。

出典:「日本におけるコンピューター化と仕事の未来」/野村総合研究所、マイケル A. オズボーン、カール・ベネディクト・フレイ

AI技術やロボットの進化により、今後なくなる仕事があると言われていますが、作業療法士の自動化可能性はわずか0.1%にすぎません。「なくならない仕事」といっても過言ではないのです。

そうした観点から、作業療法士は医療先進国であるアメリカやヨーロッパにおいて社会的地位の高い職業のひとつに数えられています。いずれ日本においても、“憧れの職業”になる可能性を秘めた職業といえるかもしれません。

作業療法士=将来が明るいといわれている理由は、大きく2つ。今後しばらく続く超高齢社会と、ストレス社会を起因としてメンタル面に不安を抱えた患者の増加が背景にあります。

リハビリは専門知識・技術を駆使して、“人の手”によって行われるものです。メンタルケアや人に寄り添う支援は、AIやロボットにはできません。身体的なリハビリだけでなく、精神的なケアまで行うことができる作業療法士の強みは、ここにあります。

作業療法士の将来性について、さらに詳しく知りたい方は、以下もあわせてご覧ください。

 理学療法士の将来性は?

リハビリの専門家というと「病気やケガによる身体機能の回復」をメインに行うイメージが強いですが、身体機能の維持やケガの予防も理学療法士の大切な仕事です。こうした仕事は高齢化が進む昨今において特に注目されてきており、病院や介護施設以外のフィールドで活躍する理学療法士も増えてきています。

たとえば、プロスポーツ選手のトレーナーとして選手やチームに日々帯同し、パフォーマンス向上をサポートしたり、ケガの予防につながる助言をしたりする理学療法士もいます。また、製造業をはじめとした一般企業に常駐し、体力仕事の多い現場スタッフの体調管理を担う立場として活躍する理学療法士も増えています。

AI技術の観点でいうと、リハビリを行うロボットがすでに病院現場に導入されている事例が出てきています。今後もこれまで人の手を介して行ってきた仕事をAIが担う機会はさらに増えていくと予想されています。

ただし、AIが導入されることで理学療法士という職業がなくなるのかというと、そのリスクは低いと言われています。たとえば、これまで理学療法士の頭で行われてきたリハビリプログラムの作成や各種事務作業など、AIに代替することでより効率的になる部分についてはAIに任せるようになるでしょう。一方、リハビリには患者さんに対する直接的な介入が不可欠ですから、そうした人間にしかできない仕事にかける時間を増やすことで、仕事の質向上につなげるような考え方がスタンダードになっていくはずです。

作業療法士と理学療法士の違い5【なり方】

作業療法士や理学療法士になるための道のりは、基本的に同様のプロセスとなります。以下をご覧ください。

作業療法士/理学療法士になるためには、国家試験に合格する必要があります。そして国家試験の受験資格を得るためには、高校を卒業したのちに厚生労働大臣が指定する養成施設を卒業しなければなりません。すなわち高校卒業後は、上記3ついずれかの進路に進むことになります。

 大学と専門学校の違い

専門学校が職業に直結した知識・技能の修得を目的としているの対して、大学は、深い専門的な学問の研究と教育が目的で、実践に加え、理論を重視して学習します。選択できる科目数が多いのも特徴です。また、教員もそれぞれの専門領域について深く研究しているため、“深い学び”を得ることができます。

作業療法士と理学療法士の違い6【国家試験】

ここでは、作業療法士と理学療法士の国家試験について、合格率や難易度、さらには試験時期や試験場所、試験内容を比較してみたいと思います。

まず、直近5年の受験者数・合格者数・合格率を比較してみました。

作業療法士国家試験の合格状況(直近5年)
  受験者数 合格者数 合格率
2022年(第57回) 5,723人 4,608人 80.5%
2021年(第56回) 5,549人 4,510人 81.3%
2020年(第55回) 6,352人 5,548人 87.3%
2019年(第54回) 6,358人 4,531人 71.3%
2018年(第53回) 6,164人 4,700人 76.2%
※出典:マイナビコメディカル/セラピストプラス~【速報】2022年「作業療法士国家試験」合格発表と合格率(57回)~
理学療法士国家試験の合格状況(直近5年)
  受験者数 合格者数 合格率
2022年(第57回) 12,685人 10,096人 79.6%
2021年(第56回) 11,946人 9,434人 79.0%
2020年(第55回) 12,283人 10,608人 86.4%
2019年(第54回) 12,605人 10,809人 85.8%
2018年(第53回) 12,148人 9,885人 81.4%
※出典:マイナビコメディカル/セラピストプラス~【速報】2022年「理学療法士国家試験」合格発表と合格率(57回)~

受験者数・合格者数を比較すると、理学療法士が作業療法士の約2倍となっていることがわかります。このことから、作業療法士に比べて理学療法士を志望している人の割合のほうが多いといえるでしょう。

合格率は、両者ともに80%前後と高い数値を推移しています。どちらの国家試験も難易度はそれほど高いものではなく、大学・短大・専門学校といった養成施設でコツコツ勉強をすることで、比較的合格しやすい国家試験といわれています。

どちらかというと、在学中の一つひとつの授業における単位をしっかり取得して進級し、すべてのカリキュラムを修了することのほうが大変、といえるかもしれません。上位学年に進級すると、病院や介護施設などで行われる臨床実習があるのですが、「実習が一番大変だった」と話す卒業生がたくさんいます。

  

国家試験の試験時期・場所・内容についても、以下で比較をしてみました。試験内容に一部違いは見られますが、それ以外は同じ条件で実施されます。

国家試験に対する意識づけは、高校を卒業して養成施設に入学してからでも遅くありませんので、参考程度にご覧ください。

作業療法士と理学療法士の国家試験について
  作業療法士 理学療法士
時期 2月 2月
場所 北海道、宮城、東京、愛知、大阪、
香川、福岡、沖縄(全国8ヶ所)
北海道、宮城、東京、愛知、大阪、
香川、福岡、沖縄(全国8ヶ所)
方式 マークシート方式
試験時間:320分(午前・午後で各160分)
マークシート方式
試験時間:320分(午前・午後で各160分)
内容 ▽一般問題(160問)
解剖学、生理学、運動学、病理学概論、
臨床心理学、リハビリテーション概論を含む
リハビリテーション医学、人間発達学を含む
臨床医学大要及び作業療法
▽実地問題(40問)
解剖運動学、臨床心理学、リハビリテーション
医学、人間発達学を含む臨床医学大要
及び作業療法
▽一般問題(160問)
解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、
リハビリテーション概論を含むリハビリテーション医学、
人間発達学を含む臨床医学大要及び理学療法
▽実地問題(40問)
運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、
人間発達学を含む臨床医学大要及び理学療法

リハビリ専門職についてより詳しく知りたい方はこちら

いかがだったでしょう。作業療法士と理学療法士の違いについて、なんとなく理解いただけたのではないでしょうか。

作業療法士や理学療法士という職業に少しでも興味を持たれた方は、まず「作業療法学科」「理学療法学科」を有する大学・短大・専門学校などの資料請求をおすすめします。どの養成施設も各ホームページから無料で資料を請求できますので、気軽にトライしてみてはいかがでしょう。

ちなみに、この記事を書いた医療創生大学にも作業療法学科と理学療法学科があります。ぜひお気軽に、資料を請求いただければと思います。

 

なお、仕事の中身がイメージしにくい作業療法士については、より詳しく説明した記事をご用意しました。本記事の「理学療法士との違い」のほか、「仕事内容」「活躍場所」「給与」「将来性」「なり方」「国家試験」をわかりやすく解説していますので、あわせてご覧ください。

学部・大学院